こんにちは、都内の大学で日本語教師をしているオリスです。
突然ですが、「日本語教師」と聞くと、みなさんはどのようなイメージをお持ちになりますか?
「国語の先生と違うの?」「日本語以外の言葉も話せなきゃ教師にはなれないんでしょう?」「日本語が話せれば誰でもなれるんじゃないの?」といった疑問を持たれる方も少なくないはずです。
ここでは、「日本語教師」がどんな仕事かを、簡単にご紹介していきます。
a.日本語教師って?
「日本語教師」と言うと、一般的には「外国語として日本語を教える教師」のことを指します。日本人にとっての英語の先生、と考えると分かりやすいですね。
日本語を“言語”として教えるわけですから、先ほどの疑問にお答えすれば、国語とは少し違いますし、日本語が話せれば誰でもなれる、というわけでもありません。日本語以外の言葉については、どのような環境で教えるかによっても異なりますが、必ず話せなければならない、というわけではないでしょう。
それでは、具体的に日本語教師がどのような場で活躍しているのかを見てみましょう。
b.日本語教師の活躍の場
日本語教師の活躍の場は全世界にあると言っても過言ではありません。海外はもちろん、日本国内にも活躍の場がたくさんあります。
ここでは、みなさんにとってもイメージがしやすいであろう日本国内の教育現場について、いくつか代表的なものを見ていきましょう。
日本語学校
日本語学校は民間の教育機関で、特に国外からの留学生への日本語教育を主として行う学校を指します。全国の300を超える学校で、約5万人の学生が学んでいます(*1)。留学生の出身国で1番多いのは中国で、ベトナム、ネパールと東アジアの国々が続きます(*2)。
なお、学生の多くは卒業後、大学や専門学校への進学という目標があって学習しており、実際に平成27年度は卒業生の77パーセントが進学しています(*3)。そのため、日本語学校で働く教師は、日本語の四技能(読む・書く・話す・聞く)はもちろん、日本語能力試験や日本留学試験などの試験対策のほか、日本の大学や専門学校で授業を受ける上で必要なマナーなど(授業中はものを食べてはいけない、勝手に外に出てはいけない、など)も教える必要があります。
ただ日本語を教えるだけではなく、生活指導なども含め学生の留学生活全体に深く関わることになるため、大変なことも多いですが、学生の多くは進学後日本での就職を考えているため、将来の日本を支える大きな力を育てている、というやりがいを感じることができるでしょう。
(*1)(*2)(*3)一般財団法人日本語教育振興協会(2016)『平成27年度 日本語教育機関実態調査』http://www.nisshinkyo.org/article/pdf/overview05.pdf
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大学
大学では様々な留学生が様々な形で日本語を学んでいます。先述した日本語学校などを経て日本人の大学生と同じように4年間の大学生活を送る学生もいれば、交換留学のような形で3週間だけ来日し大学で授業を受ける、という学生もいます。どのような形で留学生を受け入れるかは大学によって異なり、用意される日本語のクラスも様々です。なお、現在では大学(学部)と大学院あわせて10万人を超える留学生が全国の大学で学習しています(*4)。
様々な形で留学生を受け入れている大学においては、当然学生側の日本語を学ぶ目的も様々で、将来日本での就職を目指している学生もいれば、研究活動に必要だから、日本が好きだから、アニメが好きだから、単位が必要だから・・・など、一人ひとりまったく異なるといっても過言ではありません。このように、様々な目的をもって日本語を学習している学生が一つのクラスに集まって授業を受けている、というところが大学の特徴ともいえるでしょう。
そのため、大学で教えるには、様々な学生の目的をくみとりながら、クラスやコースの到達目標をクリアできるよう授業を組み立てて行く必要があります。また、多くの大学はレベルによってクラス分けをしていると思いますが、ひらがなから教えるクラスを担当することになっても、あるいは新聞記事やニュースをもとにディスカッションをしたりレポートを書いたりするクラスを担当することになっても、どのレベルを担当しても教えられる能力が必要です。しかし、裏を返せばそれだけ様々な学生と出会えるということ。多種多様な学生と向き合うことで、自分自身も成長していけるところに、大きなやりがいがあるといえるでしょう。
(*4)独立行政法人日本学生支援機構(2016)『平成 27 年度 外国人留学生在籍状況調査結果』
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/intl_student_e/2015/__icsFiles/afieldfile/2016/03/14/data15.pdf
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地域の日本語教室
公的な教育機関以外にも、日本語が教えられている場所はたくさんあります。その一つが地域の日本語教室です。多くは市民のボランティアによって公民館などで行われており、通っている人も子供からお年寄りまで幅広い年代にわたります。教室によって、一人の先生が大人数を集めて授業のような形で教える場合や、少人数に一人先生がついて各々のペースで勉強をしていく場合など、形態も様々です。
日本語学校や大学と大きく違う点の1つは、無償あるいは低価格で教育の場が提供されていることです。当然、教える側もボランティアがほとんどで、日本語教育を専門に学んだことがない人もたくさんいます。しかし、専門的な勉強や経験が重視される日本語教育の世界において、“地域の人の役に立ちたい”という熱意があれば先生になれるのが、日本語教室の特徴。地域によっては、専門家を招いてボランティアへの研修を行っているところもありますので、日本語を教えることに興味のある方は、一度教室をのぞいてみると良いかもしれません。
教室に通ってくる人々の多くは、日々の生活で日本語ができず困っていたり、友達ができず話し相手を求めていたりします。そういった人々の力になれるという点で、ボランティアにもたくさんのやりがいがあるといえます。
以上、代表的な3つの活躍の場をご紹介しました。これ以外にも、たとえば一般企業に出向いて日本に駐在しているビジネスマンを相手に授業をしたり、家族の都合等で外国から移り住んできた小中学生など年少者の日本語学習をフォローしたりなど、活躍の場は多方面にわたっています。
c.世界中に広がる活躍の場
ここまで、日本国内の日本語教師の活躍の場を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。もちろん、国内にはまだまだいろいろな活躍の場がありますし、世界に目を向ければ、本当に様々な形で活躍できる場があります。日本語を学びたい人がいれば、いつどこでどのような形でもその人の力になることができるのが、「日本語教師」なのです。