現在、何かと注目を集めている日本の「奨学金」問題。
いまや大学生の半数以上が何らかの奨学金を利用しながら学校に通っているという現状、そして返還金の滞納問題や「給付型の公的奨学金を増やそう」という声も気になるところです。
そこで今回は、「奨学金」の基本情報として、進学にかかる費用や奨学金の種類や制度について、ざっくりとまとめていきます。
1.進学にはどのくらいの費用が必要!?
「奨学金」を考える前に、進学するにはいくら位必要かということをみておきましょう。
〈入学から卒業まで 学校に納入する平均金額〉
・国公立大学-約250万円
・私立大学(理系)-約530万円
・私立大学(文系)-約400万円
・私立短大(全学科)―約230万円
・専門学校(全学科)-約230万円
これは、学校に納入する金額(入学金、授業料、施設設備費、実習費など)です。実際はこれ以外にも、下宿代や生活費、交通費などが必要となります。
国公立大学は、どの学部に進んでも学費に大きな差はありませんが、私立大学の場合は学部ごとにかなりの開きがあります。
基本的に、文系学部よりも理系学部の方が高く、医歯系、薬学系の学部に至っては年間の学費が200~500万円とかなりの高額に。
そして、特に大きな金額が必要なのは初年度。入学金や教材費などをまとめて納めるからです。また、受験費用や引っ越し代なども大きな出費となります。
2.奨学金の種類
では、奨学金について、まずはその種類をみてみましょう。現在、日本には下記の様な奨学金があります。
(1)日本学生支援機構の奨学金【貸与のみ】
(2)各地方自治体の奨学金【貸与・給付】
(3)各学校の奨学金【貸与・給付】
(4)民間(企業や個人)の奨学金【貸与・給付】
(5)そのほか、「あしなが育英会」や新聞奨学生制度など
このうち、(1)と(2)はそれぞれ国、地方自治体が行う公的な奨学金です。
また、奨学金には、返還(返済)義務のない「給付型」と返還義務がある「貸与型」の2タイプがあります。
※今回は、このうち(1)(2)(3)(4)の奨学金についてみていきます。
3.おさえておきたい「日本学生支援機構」の奨学金制度
まず、おさえておきたいのが(1)日本学生支援機構の奨学金です。日本学生支援機構は、文部科学省が管轄する独立行政法人(戦後創設された「日本育英会」の奨学金事業を引き継ぐ形で2004年に設立)。いわば、“国の奨学金”ということで、現在、最も多くの学生が利用しています。この奨学金については、少し詳しくみていきましょう。
貸与には①無利子、②有利子の2種類がある
日本学生支援機構の奨学金は「貸与型」のみ。「給付型」はありません〈※〉
この貸与という形態には、無利子の①第一種奨学金と有利子の②第二種奨学金という2種類があります。
お金を借りるなら、①の無利子の方が良いに決まっていますが、予算に限りがあるために全員が借りられるわけではありません。①第一種奨学金を借りるための選考基準は〈1.奨学金を受ける学生の学力〉そして〈2.家庭の経済状況〉の2つ。
第二種奨学金の場合は、家庭の収入が基準以内で “学修に意欲的”であればOKです。利息付きではありますが、その上限は3.0%と制限されているので、他のローンに比べるとかなり良心的。ちなみに、2014年度、日本学生支援機構の奨学金利用者約134万人のうち、“第一種”を利用できたのは約46万人。約88万人が“第二種”を利用しています。
また、これは、家庭の経済状態がより厳しい人に限らますが、第一種奨学金を借りた上で、第二種奨学金も借りるという「併用貸与」もあります。
参照;独立行政法人日本学生支援機構「JASSO年報(平成26年度版)」
月々どのくらい借りられるの?
①第一種奨学金と②第二種奨学金では月々借りられる金額が違います。
【①第一種奨学金】
パターン別に月々借りられる金額が以下のように決まっています。
〈国公立大学・自宅通学〉4万5千円
〈国公立大学・自宅外通学〉5万1千円
〈私立大学・自宅通学〉5万4千円
〈私立大学・自宅外通学〉6万4千円
※これ以外に月々3万円を借りるという選択肢もあります。
【②第二種奨学金】
進路に関わらず、下記5つの貸与額(月々)から選択します。
〈3万円〉・〈5万円〉・〈8万円〉・〈10万円〉・〈12万円〉
「入学時特別増額貸与奨学金」について
先にも触れたように初年度(入学時)は、特に大きなお金が必要となるため、①第一種奨学金、②第二種奨学金のいずれかを借りた人は、オプションとして「入学時特別増額貸与奨学金」を借りることもできます。
4.見落としてはいけない もう一つの公的な奨学金
公的な奨学金には、(2)各地方自治体の奨学金もあります。日本学生支援機構の奨学金に比べると利用者も認知度のぐんと下がるのですが、そのほとんどが無利子の貸与型。なかには給付型のものもあります。
各自治体の奨学金については、下記から調べることができます。
【独立行政法人日本学生支援機構「大学・地方自治団体が行う奨学金」】
例として「東京都」を調べてみても、区や市ごとに魅力的な奨学金がたくさん存在することが分かります。選考基準の多くは、日本学生支援機構の第一種奨学金と同じ、〈学力〉と〈経済状況〉の2つ。詳細を知りたい方は、学校の先生に相談したり、直接担当窓口に問い合わせたりして積極的に調べてみてください。
※ただし、地方自治体の奨学金は他との併用が認められていないケースがほとんど。複数の奨学金を借りようとしている場合は注意が必要です。
5.やっぱり気になる!「給付型」の奨学金
各学校の奨学金と民間の奨学金
次は(3)各学校の奨学金、(4)民間(企業や個人)の奨学金についてみていきましょう。
やはり、「奨学金を利用したい」という人の多くが気になるのは「給付型」、つまり返さなくてもよい奨学金についてではないでしょうか。実は、現在の日本で給付型奨学金を用意しているのは、各学校や民間の奨学金。数だけで見れば公的奨学金よりも多いのです。
各学校の奨学金についてみてみると、年々、独自の奨学金を用意する大学、専門学校が増えており、大学の場合はその8割、専門学校では6割が「給付型」になっています(各学校の奨学金についても、上記の【独立行政法人日本学生支援機構「大学・地方自治団体が行う奨学金」】で検索できます)。
また、「奨学金」という枠ではないのですが、「特待生」として入学し学費を「減免」してもらうという制度もあります。かなりの成績上位者が対象になるのですが、なかには4年間の学費が全額免除になるという人もいます。
民間の奨学金についても、給付型が多いというのが特徴。学校それぞれに寄付されていることが多いので、利用したい場合は、進学する大学や専門学校に問い合わせ、申請することになります。
各学校の奨学金、民間の奨学金ともに、選考基準は公的奨学金と同じ、〈学力〉(人物)と〈経済状況〉の二つを重要視しています。
6.まとめ;個々に合った奨学金を探そう
駆け足で様々な奨学金についてみてきました。今回挙げた代表的なもの以外にも、医療分野に進学する人を対象とした奨学金、親を亡くした人を対象とする奨学金、新聞販売所で働くことで支給される「新聞奨学生制度」など、それぞれ対象を限定したものもあります。
また、複数の奨学金を併用したり、「教育ローン」と組み合わせたりと、借り方も様々。
奨学金を利用して進学したいと考えている人は、自分に合った奨学金を探し、その制度や細かな規定を確認してみてください。
また、学生生活や就職、奨学金の返還計画などをあわせてシミュレーションすることも大切です。