ひと昔前まで、「学校の先生」と言えば、ほとんどが正規の教員でしたが、現在ではその定数が減らされ、代わりにたくさんの非正規教員が働いています。
「非正規教員」と一口に言っても、様々な雇用形態や働き方があります。生徒や保護者から見れば、正規も非正規もみんな同じ「先生」ということもあり、その種類や違いは実際のところあまり知られていないのではないでしょうか(実際、多くの学校では、非正規教員も正規教員と同じ「教諭」という肩書で呼ばれています)。そこで、今回は非正規教員にスポットを当て、学校にはどんなかたちで働く先生がいるのか、その雇用形態や仕事内容についてみていきます。
いまや教育現場には欠かせない
常勤講師と非常勤講師の仕事・待遇
【常勤講師】
正式には「臨時的任用教諭」という名称ですが、「常勤講師」という呼び方で広く知られています。「常勤講師」の仕事は正規教員の仕事内容とほとんど変わりません。授業はもちろん、生徒指導や様々な校務も仕事のうち。学級担任や部活顧問を任されることもあります。勤務時間も正規教員と同じように、学校の始業・終業時間を守らなくてはなりません。待遇面では、正規教員に準じた給与のほか、ボーナスや退職金が支払われ健康保険への加入も可能です。正規教員と違うのは、雇用が期限付きであること、給与が頭打ちであることの二つ。基本的に雇用期間は1年以内(採用年度内)ですが、1年ごと更新し、1つの学校に長く勤める常勤講師も多くいるようです。
【非常勤講師】
「非常勤講師」の仕事は、特定の教科の授業を受け持つことのみです。それ以外の校務を行う必要はありませんし、学校の就業時間も関係ありません。受け持つ授業とその準備のためだけに学校に来ればよいのです。給与は授業のコマ数に応じた時給制。地域差はありますが、平均額は時給(1講義)2000~3000円程度。雇用形態としてはアルバイトに近いですね(ただし、収入の額に関係なく健康保険等には加入できません)。
時間の融通がきくので、「教員採用試験の勉強をしながら」という人、「自宅でピアノ教室を開きつつ、空いた時間で」という人、あるいは「家事や育児をしながら」という人など、他のことと両立しながら講師を務める人が多いようです。また、時間の調整さえできれば、複数の学校で非常勤講師を務めることも可能です。
教員免許がなくてもOK
“先生”になれる特別なケース
【特別非常勤講師】※教員免許不要
ある教科の一部を教える講師です。例えば、調理師が家庭科の「調理実習」だけを担当したり、書道家が国語の「書道」の授業を指導したりというようなケースです。「教員免許」は必要ありませんが、経験や技能が重視されます。また、任される授業は、担当教員の補佐ではなく、自ら主導して進行していくので指導力も必要です。
【特別免許状 教諭】※教員免許不要
「特別非常勤講師」と混同されがちですが、こちらは教科をまるごと担当する責任があります。例えば、看護師の経験と知識のある人が「看護」(高校)の授業を受け持ったり、外国人の英会話学校講師が「英語」の授業を受け持ったりというケースです。こちらも「教員免許」ではなく経験や実技指導の力が重視されます。基本的には、学校や教育委員会などからの推薦をもらったうえで学校に配属となります。1教科を長期スパンで担当するので、授業進行の計画や生徒たちの習熟度の確認、授業の工夫などが必要です。
【臨時免許状 助教諭】※教員免許不要
これは、「どうしても教員が足りない」「採用を予定していた教員が勤務できなくなった」などの理由で、急きょ、教員免許を持っていない人に“先生”になってもらうための特別な免許状です。「臨時免許状」を得た人は、3年間という期限付きで教員になることができます(引き続き、教員免許保持者が採用できない場合は6年)。とはいっても、実際には教員としての素質や経験がある人に任せたいというのが学校側の本音。よくあるのが、高校や中学の教員免許のみを持っている人に小学校教員の臨時免許状を出したり、「英語」の免許状しか持っていない人に「国語」の臨時免許状を出したりというケース。無理のない形で代役を務めてもらうことが多いようです。
まとめ
正規教員の削減や専門性の高い教科の導入など、現在多くの学校が非正規教員のサポートを必要としています。教員経験者はもちろん、教員免許を持っている人や専門分野の指導力がある人の中には毎年、学校からのオファーが絶えないという人もいるようです。
「正規教員になりたい!」と頑張っている人にとっては複雑かもしれませんが、「限られた時間で教職に携わりたい」、「教科だけを担当したい」などという人にしてみると、様々な働き方があるこの状況は好都合かもしれません。また、正規教員を目指す人にとっても、非正規教員として教壇に立つことは経験として役立ちますし、採用試験の際に有利ということもあります。
今後の教育現場では、英語教育の本格化、ICT教育の導入、部活動の指導など、外部のサポート(専門領域の指導者)がもっと必要になるのではないかと予想されています。どのような“先生”が求められてくるのか、その需要の広がりも注目したいところです。