家庭のあり方・働き方も多様化している近年、共働き世帯が増加しています。
併せて、待機児童問題は、未就学児の「保育所」だけでなく就学児の「学童保育」も同様にあり、学童保育で働く「学童保育士(学童保育指導員)」「放課後児童指導員」などの学童保育スタッフのニーズ大変増加しています。
この記事では、学童保育スタッフの仕事内容や働き方などについてご紹介します。
学童保育とは
『学童保育』とは、主に共働き世帯・シングル世帯や病気・介護などで日中(放課後)に『子どもの面倒を見るのが難しい』家庭の子供を対象に、《放課後に遊びや生活の場を与え、健全な育成を図る》ことを目的としています。
平日の放課後だけでなく、土日祝の休日や長期休暇(夏休みなど)の際にも『子どもを安心して預けられる場所』として子どもを持つ保護者にとって欠かせない施設であり、需要も高まってきています。
学童保育スタッフは、子どもの安全を見守り、学習のサポートや、食事の提供を行うなど多様なサービスを提供し、子どもたちの自主性・社会性・創造性などを成長のサポートも行います。
正式名称は『放課後児童健全育成事業』
学童保育の正式名称は『放課後児童健全育成事業』であり、厚生労働省が管轄しており、地方自治体が運営している取り組みの一つです。
近年は、塾などの民間企業が学童保育施設を運営することも多く、「学童クラブ」「児童クラブ」「放課後児童クラブ」などと呼ばれることもあります。
厚生労働省が調査『クラブ数、登録児童数および待機児童数の推移』によると、年々学童保育所の登録児童数とクラブ数が増加しています。
※この記事では、『放課後児童健全育成事業』を『学童保育』として記述しています。
学童保育の仕事内容
学童保育で働くスタッフのことを「学童保育指導員」「学童保育スタッフ」「学童保育士」「放課後児童支援員」などと呼ばれることもあります。
※「放課後児童支援員」については後ほど詳しくご紹介します。
基本的なお仕事
学童保育で働くスタッフの主な仕事は、主に放課後に通所してきた子どもたちに学校でもない家庭でもない『第3の生活の場(安心して過ごせる場)』を提供することです。
土日祝の休日や、夏休みなどの長期休暇等の場合は、朝から子どもを預かることもあります。
保護者が安心して預けられる環境の提供、子育てを両立できるように支援することが役割です。
柔軟な対応が求められる
共働きや介護など、様々な都合で子どもたちのお世話ができない家庭の代わりに、学校の宿題をしたり、遊んでいたりするのを見守ります。おやつを提供することもあり、食事マナー指導など生活の指導を行うこともあります。
時には一緒に遊ぶこともありますし、遊びの中でふざけてお友達どうしで怪我をさせた際、トラブルが発生した場合は、間に入ることなど様々な対応を求められますし、柔軟に対応しなければなりません。
連携
子供の様子を連絡帳に記載し、保護者に様子を伝えたりすることや、子どもの状況について学校と連携を取ることなどもあります。
具体的な内容
子どもたちがいない時間帯のお仕事
清掃・環境整備
子どもたちが過ごす学童施設内外の清掃や環境整備をします。
施設内外を清潔に保ち、遊具などで怪我をしないよう遊具の整備など、子どもたちが『健康・安全に過ごせる環境』をつくります。
行事やイベント企画
学童保育内でイベントや行事を行う場合は、子どもが来る前に企画・打ち合わせや準備をします。
施設の外に出る遠足イベントなどは「いつ・どこで」何人くらいで行くのかなど、関係各所への連絡なども行います。
受け入れ準備・買い出しなど
スムーズに子どもたちを受け入れるための準備をします。
子どもたちに学習サポートをする場合は、教材の用意。おやつ時間などで、お菓子などを提供する場合は買い出しなども行います。
子どもたちがいる時間帯のお仕事
送迎
学校に併設されている施設であれば、子どもが学校帰りに直接通所しますが、学校から離れた場所にある施設の場合は、学童スタッフが送迎を行うことが一般的です。
車を使う場合や徒歩の場合などお迎えの方法は様々です。
子どものお世話
子どもが通所してきたら、子供のお世話をします。宿題をする子、遊ぶ子など様々です。
積極的にお世話をするというわけではなく、あまり介入せず、子どもたちの自主性が成長できるように見守りサポートします。
保護者対応
低学年子供が場合は、帰宅時に保護者が迎えに来ることが多いです。お迎えの際に、その日どのように過ごしていたか、怪我や喧嘩があったときはその報告をします。
また、保護者が来ない場合は、連絡帳を使って報告をしたり、緊急の際には直接電話したりすることもあります。保護者との情報共有をしっかりと行わなければなりません。
送り出し・片付け
時間が来たら子どもたちを送り出し、片付けを行います。
基本的には子どもたちが遊んだものは子どもたちで片付けを行いますが、最終的な片付けは学童保育スタッフで行います。同時に備品のチェックなど遊具の確認なども安全な環境が保てているかのチェックを行います。
申し送り
連絡事項があればスタッフ全体に周知し、翌日のスケジュールなどを確認します。
学童保育の1日のスケジュール
学童保育スタッフの1日のスケジュール例をご紹介します。
勤務時間
平日子どもたちは学校なので、お昼(12時)くらいから勤務開始です。
お昼頃から子どもの受け入れ準備→子どもを受け入れ、終業は20時頃が一般的です。
土日祝の休日や、長期休暇の際は朝からの勤務が一般的です。
平日のスケジュール
- 10時00分:出勤・受け入れ準備(掃除・買い出し等)
- 12時00分:昼食
- 13時30分:子どもたち来所(送迎があれば送迎)
~自由時間の見守り(遊び、宿題等)~ - 15時00分:おやつの提供
~自由時間の見守り(遊び、宿題等)~ - 17時30分:子どもたち帰宅(送迎がある場合は送迎)
- 18時00分:会議・イベント準備・雑務など
- 19時00分:閉所・帰宅
土日祝のスケジュール
- 08時00分:出勤・受け入れ準備(掃除・買い出し等)
- 08時30分:子どもたち来所(送迎があれば送迎)
~自由時間の見守り(遊び、宿題等)~ - 12時00分:昼食の提供
~自由時間の見守り(遊び、宿題等)~ - 15時00分:おやつの提供
~自由時間の見守り(遊び、宿題等)~ - 17時30分:子どもたち帰宅(送迎がある場合は送迎)
- 18時00分:会議・イベント準備・雑務など
- 19時00分:閉所・帰宅上記は一例で、施設によって異なります。
休日はシフト制で勤務することが多く、
どこかへ外出(遠足など)することや、
季節ごとにイベントなども催すこともあります。
学童保育で働くには
学童保育で働くために必ず必要な資格はありませんが「放課後児童支援員」保有していると歓迎される資格があります。資格を持っているスタッフは「放課後児童支援員」と呼ばれ、資格を持たないスタッフを「学童保育指導員」と呼びます。資格の有無で業務内容が極端に変わることは有りません。
学童保育で働くメリット・デメリットや給与(待遇)についてはこちらでご紹介していますので、御覧ください。
放課後児童支援員のなり方
放課後児童支援員とは
以前は、学童保育の指導に資格は必要ありませんでしたが、昨今、学童保育の需要が高まり、学童保育の質の向上が求められ、2015年度の『子ども・子育て支援新制度』の施行に伴い『放課後児童支援員』という専門資格が創設され、学童保育に2人以上の「放課後児童支援員』の配置が義務付けられました。
※支援単位ごとに放課後児童支援員2名以上配置(内一人をのぞき、補助員の代替可)そのため、正規職員として働く場合は「放課後支援員」の資格取得者が求められることがあります。
放課後児童支援員 資格取得方法
『放課後児童支援員』資格を取得するためには、以下の資格又は要件を満たす方で、都道府県が行う研修受けることで資格取得できます。
※放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準(基準第10条第3項)より
資格・要件
- 保育士資格
- 社会福祉士資格
- 教員免許(幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校)
- 国内外の大学/大学院で「社会福祉学」「心理学」「教育学」「社会学」「芸術学」「体育学」を専修する学科、またこれに相当する課程を修めた者
- 上記、学科又はこれらに相当する課程において優秀な成績で単位を修得したことにより大学院への入学が認められた者
- 高卒以上でかつ、2年以上放課後児童健全育成事業に類似する事業に従事した者
- 5年以上放課後児童健全育成事業に従事した者
研修内容
放課後児童支援員の研修は自治体によって異なりますが、研修日数は4~8日程度で、2~3ヶ月に1回のペースで実施されています。
研修の目的は、放課後児童支援員としての基本的な考え方や知識・技能を認識することです。約24時間の講義・演習があり、保有する資格によっては一部免除になる場合もあります。
研修項目
1.放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の理解
2.子どもを理解するための基礎知識
3.放課後児童クラブにおける子どもの育成支援
4.放課後児童クラブにおける保護者・学校・地域との連携・協力
5.放課後児童クラブにおける安全・安心への対応
6.放課後児童支援員として求められる役割・機能
※厚生労働省「放課後児童健全育成事業について」より
研修費用
研修の受講料は基本的に無料です。交通費やテキスト代等は別途必要です。
資格を持っていない場合でも、指導員補助として勤務を続けることで研修の受講要件を満たすことができるので、「放課後児童支援員」を目指すことは可能です。
学童保育で働く上で『向いている人』『求人の探し方』『男性の働きやすさ』についてこちらでご紹介していますのでご確認ください。
学童保育の設置基準と今後
2015年度より実施されている「子ども・子育て支援新制度」の中で、これまで曖昧だった学童保育の施設や環境の規定が定められました。
学童の設置基準
- 施設・設備について、児童1人につき約1.65㎡以上の面積を確保する。「遊び・生活」と「静養」のスペースを分けて設置する。
- 学童保育1室受け入れる児童数は概ね40人以下。それに対して「放課後児童支援員」を2人以上配置する。
- 平日は3時間以上。土、日、長期休業期間等は8時間以上児童を受け入れる。1年につき250日以上開所する。
新・放課後子ども総合プラン
女性就業率の上昇などにより、共働き家庭の児童数のさらなる増加が見込まれています。
政府の「新・放課後子ども総合プラン」では「放課後児童クラブについて2023年度末までに計約30万人分の受け皿を整備」を目標として掲げています。
今後「学童保育」という場はより需要が高まります。資格を保有している人や、「子どもと接する仕事をしたい人」にとっての一つの職業の選択肢となります。
これまで学童保育のお仕事内容・働くためについてご紹介しました。
小学生の子どもがいる家庭にとって『学童保育』は欠かせない存在で、働く人材の需要も増加します。有資格の方や「子供と関わる仕事」をしたい方は働き方の一つとして検討してみてはいかがでしょうか?