「教員免許」は、学校で教師になる以外“つぶし”がきかない資格などと言われますが、実はそんなこともありません。現在、学校では、正規教員のほかにも授業や学校運営をサポートするスタッフが必要とされています。
また、学校以外の「学びの場」も多様化。「教える仕事」の幅が広がってきているのです。求人にあたっては、特に教える資格や経験を問わないという所も多いのですが、「教員免許」を取得するために得た知識や技術、経験がそれらの仕事に活かされるのは言うまでもありません。
ここでは、教員免許を活かして働ける仕事にはどのようなものがあるのか、〈学校〉と〈学校以外の学びの場〉に分けて挙げてみます。
学校
「チーム学校」や「T・T(ティーム・ティーチング)」という言葉を耳にしたことはありませんか。現在、小・中学校、高校では、正規教員と外部の専門スタッフが協力しながら、円滑な授業進行、生徒対応、校内業務にあたっています。よく聞く「ソーシャルワーカー」や「スクールカウンセラー」もその一部。それ以外にも「講師」をはじめ、正規教員をサポートする様々な仕事があります。
講師
正規教員の定数が減らされている現在、欠かせないのが「常勤講師」、「非常勤講師」の存在です。「常勤講師」の仕事は、正規教員とほとんど同じ。授業のほか、クラスの担任、部活の顧問を任されることもあります。一方の「非常勤講師」は特定の教科の授業のみを担当します。講師は基本的に「教員免許」の保有が条件ですが、今後は、実践力を鍛える授業を担当する講師(特別非常勤講師、ICT支援員、英会話講師など)や部活動の指導を行う「部活動指導員」など、講師の種類も増えていきそうです。
補助教員
教員のサポートをする仕事です。授業で使う資料を用意したり、理科の実験の準備をしたりと、授業やクラス運営が円滑に進む様にお手伝いをします。まだ学校生活に慣れない新1年生(小学校)のクラスに入って、“集団行動に慣れない”、“勉強についていけない”などの理由で困っている児童をサポートする仕事もあります。
学習支援員・学習指導員
通級クラスや放課後補習など少人数のクラスで学習支援をする仕事です。“授業についていけない”、“個別のフォローがほしい”という児童・生徒たちを指導するというパターンが多く、個々の苦手分野や特性、どこでつまずいているかを確認しながら、丁寧に教える必要があります。
特別支援教育支援員(介助員)
特別支援級に所属する子どもをサポートする仕事です。個々に応じた学習のほか、日常生活に必要なこと(食事マナー、服の着脱、排せつなど)、社会のルール、他人とのコミュニケーションなどを一緒に訓練していきます。それぞれの苦手分野を把握しつつも、「障害」という枠に捉われすぎず、一人ひとりの個性や日々の成長と向き合うことが大切です。
学童スタッフ
放課後や休みの日に小学生(日中、両親がいない家庭の児童)を預かる「学童」で、子どもたちを見守る仕事です。学童は小学校内、児童館などに設置されています。子どもたちが所属する小学校と密に連携していますが、管轄は別。公設民営の学童も増えていて、民間企業のスタッフとして公設の学童で働く人も増えてきました。最近では「教員免許」保有が条件というところも多くなっています。
学校以外の学びの場
学習塾・予備校
学校以外で教員免許が活かせる仕事の代表格「塾」。大勢の生徒の前で講義する集団指導のほかにも個別指導やチューター、事務など、その仕事内容は多岐にわたります。「教員免許」がなくても働ける塾がほとんどですが、教育に携わりたいと勉強してきたことや教員としての経験が優遇される場合もあります。また、教員を目指す大学生も多く活躍しています。
集団指導(グループ指導)の講師
複数の生徒を前に講義する講師です(グループ指導は集団指導に比べて少人数)。知識や教える技術はもちろん、流れのある授業展開、そのための準備が必要です。最初は誰でも緊張するものですが、生徒の反応がダイレクトに見られるので、メリハリの付け方や教え方のコツが徐々に身についてきます。教員を目指す人にとっては貴重な経験となります。
個別指導の講師
指導者1人に対して生徒1~3人を受け持つ塾が多いようです。個別指導なので、個々のペースや特性をつかんだうえで、「どこがどのように分からないのか」をしっかり聞いて、その生徒にあった教え方をしていきます。
予備校
大学・短期大学を受験する高校3年生、浪人生を対象として指導します。教える技術はもちろんですが、受験についての最新知識、各大学の試験の出題傾向を把握した上で、生徒に対応しなければなりません。
運営スタッフ
塾には、講師以外にも事務や採点、保護者対応、生徒の質問や相談を受け付ける「チューター」、広報活動やサイトの作成など、運営を支えるための仕事もたくさんあります。
塾・習い事+預かりサービス
近年、注目を集めている分野です。公設の学童でも保育園同様、待機児童問題が課題となっている昨今、塾や各種教室を運営する民間企業が、「預かりサービス」を兼ねた学習指導やスポーツ、英会話などの習い事を展開しています。なかには、自宅までの送迎や夕食が付くようなところも。ここでは、学習支援、習い事の指導、保育業務、企画・運営など、それぞれの業務に適した人材が必要とされています。
家庭教師
生徒の自宅に訪問し学習指導を行います。学習の進め方や教え方は家庭教師に委ねられるので、担当する生徒と話し合いながら勉強の計画を立てることができます。また、保護者と直接話す機会も多いので、希望や意見を聞けたり、生徒の普段の様子を教えてもらえたりと、連携しながら進められるのがやりやすいところです。家庭教師をする場合は、仲介する会社に登録し、派遣先(生徒)を紹介してもらう方法が安心です。
幼児教室
体験型 幼児教室
就学前の子どもを対象とした教育の場、いわゆる「幼児教室」の種類も増えてきました。人気が高いのは、リトミック、英語、造形、知育遊びなどの体験型教室。「遊び」の延長で興味を広げ、子どもの潜在能力を引き出したり、身体感覚を鍛えたりします。あいさつ、けじめ、意志の伝達など、基本的なことを念入りに指導するのも幼児教室の特徴です。幼稚園や保育園に出向いて指導することもあります。特に資格は必要ないという所もありますが、「幼稚園教諭」免許や「保育士」の資格保有者が優遇されることもあります。また、子育て経験も活かせる分野です。幼児期ならではの感受性や伸び代を受け止め、子どもが“楽しい!”と思えるような指導を行うことが大切です。
受験指導型 幼児教室
幼児教室には、幼稚園・小学校受験のための教室、あるいはそのコースを設けているところもあります。様々なプログラムを通して、子どもたちの発達を促すのは体験型の幼児教室の同じですが、それ以外にも、礼儀作法や受け答え、面接や試験の練習にも力を入れています。指導者は、各学校・幼稚園の特徴や試験問題の出題傾向を把握した上で、子ども・保護者へのアドバイスを行わなくてはなりません。